2014年09月29日

ニシノユキヒコの恋と冒険(2014.2.8)

2014.9.28

ニシノユキヒコの恋と冒険 (2014.2.8): 作品情報 - 映画.com

川上弘美の同名人気小説を、竹野内豊主演、「犬猫」「人のセックスを笑うな」の井口奈己監督のメガホンで映画化。ルックスも良くて仕事もでき、セックスも良くて女性に優しいニシノユキヒコの周囲には、いつも魅力的な女性たちがいた。ニシノはそんな彼女たちの欲望をみたし、淡い時間を過ごすが、女性たちは必ず最後にはニシノのもとを去ってしまう。それでも真実の愛を求め続けるニシノの美しく切ない人生を描く。ニシノを取り巻く女性たちを、尾野真千子、成海璃子、木村文乃、本田翼、麻生久美子、阿川佐和子、中村ゆりかが演じる。

竹野内豊「ニシノユキヒコの恋と冒険」で見つけた新たな引き出し

竹野内豊がモテる男に扮する。さも有りなんと思えるキャスティングだが、「ニシノユキヒコの恋と冒険」で演じたタイトルロールはひと味もふた味も違う。恋に落ちた女性にことごとくフラれてしまうのだ。決して致命的な欠陥があるわけではない。そんな不可思議な主人公を、リアルかつ浮遊感を漂わせてスクリーンに現出させた。かねて注目していた井口奈己監督の演出を体感して見つけたという、竹野内の新たな引き出しとは?(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)

ニシノユキヒコは仕事もでき、セックスも抜群、何より女性に優しい。これに竹野内のルックスが加われば怖いものなし、と小市民的には思ってしまう。だが、恋はそれほど単純ではない。言い寄られてはフラれるニシノの魅力を、竹野内本人もいまだ計りかねている。

「試写を拝見した後でも、男目線で見るとなぜこんなにも多くの女性から愛されてフラれるのか、フラれてもモテ続けられるのか、ちょっと首をかしげたくなるようなところはあります。でも、分からないということが結局、冒険ということだろうと自分なりには解釈しちゃっています」

そもそも出演する決め手となったのは、井口監督の存在。前作の「人のセックスを笑うな」(2008)を見て、その世界観に魅了された。

「『人のセックスを笑うな』の永作博美さんと松山ケンイチさんの空気感を見ても一目りょう然だと思いますけれど、作られた感がないというか、まるでドキュメンタリーを見ているような恥ずかしさに陥りますよね。それが井口ワールドというか、ニシノユキヒコの話に井口監督演出、なんか面白い感じになるんじゃないかって。こういうチャンスがないと井口組に参加できる機会もない。ぜひやらせていただきたいと思いました」

井口監督からは「あまり気負わず、作り込んだりせずに、普段のご自身のままでいいですよ」と求められたという。だが、自然体の演技こそ俳優にとっては最も難しいといわれる。しかも、井口演出はカットを割らない長回しが特色。それを現場で存分に味わうことになる。

「役者が役を演じようとすることよりも、リアルにその場で起こる現実をカメラに残したいという思いがすごく強いんだと思います。台本で決められた部分が終わっても、ずーっとカメラを止めずにいたこともありました。それは意地悪で長回しをするということではなく、監督がカットをかけるのを忘れちゃったりするんですよ。『随分、長かったですね』って言っても、ケロッとした顔で『そうだったっけ? でも面白かったからずっと見ちゃいました』って。でも、監督のことを信頼できているからこそできるとは思います。まあ、嫌ですけれど(苦笑)」

無意識で悪意のない“ドS演出”。実はその“洗礼”を撮影初日から受けている。上司の尾野真千子と付き合い始め、じゃれ合うシーンだ。2004年の主演ドラマ「人間の証明」に尾野は端役で出演しているが、すれ違うくらいの設定で竹野内の記憶にはなく、実質的な初共演といえる。

「今日はよろしくお願いしますと言って、そのままイチャイチャするようなシーンだったんです。テストをやって、『じゃあ本番は、今の10倍以上ラブラブでお願いしまーす』と言われ挑んだんですけれど、台本上は終わっているのにカットがかからない。どうしたらいいのかなあ、でも10倍以上イチャイチャしてくださいって言われたしなあ。じゃあ、どうしたらいいんだろうって必死でしたね」

尾野のほかにも“交際相手”は麻生久美子、阿川佐和子、成海璃子、木村文乃、本田翼と魅力的な女性ばかり。スタッフにも女性が多かったそうで、なかなか体験のできない現場だったという。実際にモテているな、と錯覚することはなかったのだろうか。

「どうなんでしょう。まあ、疑似体験はできていたのかな。けっこう男くさい現場にいることも多かったので、これだけ女性が多い現場でしかもキャストはほぼ女性ですから。その前に男くさい現場(テレビ朝日の主演ドラマ「オリンピックの身代金」)にいたもので、だから華があるよなって。明るいんですよ、穏やかな感じで。だからとても幸せな現場でした」

それでは、自身の結婚観はどうなのだろう。「それねえ、どの取材でも必ず聞かれるんですよね」と苦笑しつつも持論を披歴した。

「この年(43歳)まで結婚していないと、余程何かおかしな人じゃないかって思われるかもしれないんですけれど、いたって普通にたまたまあぶれちゃっただけです。今まで結婚するかもしれないっていうこともあったので。でも、タイミングが合わなかっただけですよ。この年で結婚したいなんて、声を大にして言えるものじゃないですけれど、そういうご縁があったらということです。まだ未体験なので夢見ているだけかもしれないですけれど、きっと自分にとっては仕事は重要な人生の一部ですけれど、それ以上に大切な場所になるかもしれないですよね」

だが、井口監督との縁によって生み出されたニシノユキヒコは、どこかフワフワとした印象を与えつつも、女性には常に真摯に向き合う姿はリアリティに満ちている。なんとも希有なキャラクターで、竹野内も新境地を実感しているようだ。

「井口監督とご一緒できたことで、自分でも今まで気付かなかったような引き出しを新たに発見することができました。やはり今後も、そういう引き出しを開けられるようなチャンスに恵まれればいいと思います」

昨今は映画「謝罪の王様」やJTの缶コーヒー「Roots」のCMなどで、クールなだけでなく、いたってマジメに面白さを醸し演技の幅を広げ続けている印象がある。これも、好機を逃さない感性の鋭さのたまものだろう。

「いろいろな違う役をどんどんやっていきたいというのは、ごくごく自然なこと。ただし、アクションや悪役など、経験していない役はたくさんあって興味はありますけれど、自分はこんなこともできます的な感じではやりたくないです。中途半端があまり好きではないので、最初から何かイメージが決められたものより、自分がこういう役目をいただけるチャンスがあったら、その時は縁を大切にできたらと思います」

最後に「井口監督とは、いい縁だったか」と問うと、「そうですね。楽しかったです」と満足げな笑顔を見せた。今年が俳優デビューから20年の節目。ベテランの域に入ったが、竹野内の引き出しは、まだまだ増え続けていくに違いない。

Amazon.co.jp: ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫): 川上 弘美: 本


内容(「BOOK」データベースより)

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ…。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

川上/弘美
1958(昭和33)年東京都生れ。’94(平成6)年「神様」で第一回パスカル短篇文学新人賞を受賞。’96年「蛇を踏む」で芥川賞、’99年『神様』でドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、’01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

平成の光源氏??
投稿者 ワンダーソニア 投稿日 2004/6/11

実は今、何ヶ月もかかって「源氏物語」を一巻ずつ読んでいるのだが、ある意味ニシノくんも平成の光源氏かもしれない・・・と思った。女性に対して彼はいつも無意識のうちに「なめらかな上の空」なのだ。誰よりも優しく、無邪気で、誰よりも残酷。それに気づいたオンナ達はみんな彼から去っていく。あれだけ恋をしたのに、死ぬまで孤独だったニシノくん。でもでも、おそろしく魅力的だった。やっぱり「源氏」!?つまらない恋愛をいっぱいするくらいなら、ニシノくんのようなひととふるえるような濃密な時間を持ちたい、と願うオンナは多いはず。たとえ別れが約束されている恋だとしても。そう、たぶん、私もそのひとり。

ぼくにはだめでした
投稿者 もりーに 投稿日 2011/5/23

幻想的な蛇を踏む、神様、がけっこう好きだったので、これはどうかと手に取った。
私はこれで、この作者との間に溝ができてしまった。
この溝に理由があるとすれば、私が男である、ということにちがいない。
その他の人の感想を見ながら、なるほど、なるほど、好きな人はこの作品好きなんだなあ、と思った。
要するにこのニシノ君というキャラや、世界観に、妙な不快感を感じるわけですよ。
男である私は、ニシノユキヒコを人を愛せない哀れなやつだなどと、とは思わない。
ニシノ君に会いたい、とも思わないし、わかるわかる、こういう男の人っている〜とも思わない。
なにを思うのかというと、
「いいなあ、もてて。女はみんなこういう男に股を開き、その後、上から目線で、ダメンズ批判みたいなガールズトークするわけね、よかったね」というしょぼくれたルサンチマン的な感想のみ。登場人物の誰にも感情移入できず、なんの深みも、説得力のある人間描写も感じず、あっさり終わって閉じた本だった


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2014年09月27日

もらとりあむタマ子(2013.11.23)


モラトリアム【moratorium】.

1 支払猶予。法令により、金銭債務の支払いを一定期間猶予させること。戦争・天災・恐慌などの非常事態に際して信用制度の崩壊を防ぎ、経済的混乱を避ける目的で行われる。

2 製造・使用・実施などの一時停止。核実験や原子力発電所設置などにいう。

3 肉体的には成人しているが、社会的義務や責任を課せられない猶予の期間。また、そこにとどまっている心理状態。

モラトリアムにんげん【モラトリアム人間】

年齢では大人の仲間入りをするべき時に達していながら、精神的にはまだ自己形成の途上にあり、大人社会に同化できずにいる人間。

モラトリアム【moratorium】の意味 - 国語辞書 - goo辞書

もらとりあむタマ子


『もらとりあむタマ子』(もらとりあむタマこ)は、2013年11月23日公開の日本映画。監督は山下敦弘、主演は前田敦子。第18回釜山国際映画祭出品。

もともとはMUSIC ON! TVの季節ごとのステーションIDの企画としてスタートし、その後短編ドラマ「秋と冬のタマ子」を経て長編映画化された(「秋と冬のタマ子」の内容はすべて映画に含まれている)。

東京の大学を出たものの、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻ってきて就職もせず、家業も手伝わず、ただひたすらに食っちゃ寝の毎日を送る23歳のタマ子が、やがてわずかな一歩を踏み出すまでの1年を追う。

もらとりあむタマ子 - Wikipedia



前田敦子が寄せる山下敦弘監督への思い、そして自ら語る「私の夢」とは…

女優・前田敦子が、どこまでもリラックスした面持ちで席に着いた。隣席に座るのは、前田が「もともと大ファン」でいつか一緒に仕事をしたいと熱望していた山下敦弘監督。「苦役列車」で初タッグを組んだふたりが「もらとりあむタマ子」で再び相まみえることになり、前田の新たな一面をすくい取ることに成功したのは必然といえるかもしれない。前田と山下監督はいま何を思っているのか、ふたりに話を聞いた。

第18回釜山国際映画祭「A Window on Asian Cinema部門」でワールドプレミア上映された今作は、音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」の30秒のステーションIDからスタートした企画。短編ドラマを経て長編映画として劇場公開されること、国際映画祭に出品されることは異例の展開で、星野源が主題歌として「季節」を提供していることも大きな話題を呼んだ。

山下監督は、今作の主人公・タマ子を通じて前田の女優としての魅力を再認識したという。それは撮影前から確信していたことでもあったようで、「『苦役列車』を見てくださった方であれば分かると思うのですが、今回は特に何もしていないんです。セリフやストーリーに頼っていませんから。今回のあっちゃんは主役なのにしゃべらないし、ダラダラしているし、不機嫌(笑)」と説明。そして「それが魅力的に見えるというのが、あっちゃんの持っている魅力なのでしょうね。そこを信じてとまで言うと大げさになりますが、そういう役をやっても魅力的になるだろうなと僕と脚本の向井(康介)の中にはありました」と明かす。

前述の説明通り、今作の前田は“残念な実家依存娘”というフレーズそのままに、とにかく無気力だ。都内の大学を卒業し、父がひとりで暮らす山梨・甲府のスポーツ用品店に戻ると、ひたすら食べて、寝て、漫画を読んでばかり。父の「就職活動はしているのか?」という問いかけにも、「その時がきたら動く。少なくとも今ではない!」と開き直り、自分を肯定してばかりの“口だけ番長”ぶりを露呈する。しかし、山下監督が構想段階から「ダラダラしたあっちゃんは可愛いに違いない」と話していたように、どこにでもいそうな市井の女性の日常を誇張することなく丁寧に描くことで、見る者に不思議な爽快感すら抱かせる新ヒロインを構築してみせた。

前田にとっては、憧れの山下組初参加となった「苦役列車」を経たことがプラスに作用したようだ。「本当に大好きな監督っていうところから入っちゃったので、緊張して『苦役』の現場では全然かかわることができませんでした。でも、それが私にとってはすごく良かったのかなと思います。いまは居心地がすごく良くなりました」とリズミカルに話す前田に対し、山下監督が「前回は居心地が悪かったみたいじゃないか(笑)」と突っ込みを入れるなど、和気あいあいとした様子。それでも、憧れの存在に対する敬意はそこはかとなく感じられ、「演出してくださるときの監督はすごく厳しい人だなと思います。全部見られていると思いますし、ドキドキします。絶妙に距離を守ってもらっている感じがして、すごくありがたいですね」というコメントからもうかがい知ることができる。

役作りについては、「変に考えちゃいけないとは思っていましたし、ただ“そこに居たい”と思っていました。そういう空気を現場の皆さんが出してくださっていたので、異様な感じではあったのですが、スタッフさんも監督も、皆さんがタマ子っぽかったですね」と述懐。山下監督も、「僕は結構題材に影響を受ける方なのですが、今回に関してはあの空気感のまま僕もいれた感じでしたね」と笑った。

今作の見どころのひとつとして、タマ子と父・善次(康すおん)の何気ないやり取りが挙げられる。父は奔放な娘を愛しく思い、娘も不器用な父を思いやるという関係性が、否が応でも浮上してくる。前田に家族について聞いてみると、「私はお母さんと比べると、お父さんととても仲が良いというわけではないんです。仲は良いしもちろん嫌いではないけれど、別にしゃべりたくない…みたいな(笑)。それが女の子の普通の感情だとは思うのですが、だからこそタマ子の立ち位置というのが理解できましたね」という答えが返ってきた。

愛知出身の山下監督にとっては、「うちは転勤が多くて引っ越し人生だったので、僕が小さい頃に過ごした家というのはもうないんですよ。だから劇中で描かれるような、実家が街に溶け込んだスポーツ用品店というのは憧れがあるんですよね」と話す。そして「実家にいるときはどこで過ごすの?」と話題を振ると、前田は「私はソファでもなく、自分の部屋でもなく、リビングのダイニングテーブルで結構長い時間を過ごしちゃいます。実家でダラダラするのって楽しいですよね」と私生活の一端を打ち明けた。

「松ヶ根乱射事件」(2007)以来、6年ぶりのオリジナル作品となった山下監督は4〜5年前から脚本の向井とオリジナル作品について模索を続けていたという。「アイデアは出すんですが、自分たちでは結局決められずにずっときちゃったんです。タマ子は企画ものではありますが、気づいたら映画になって、それがオリジナルになった。『あ、自分も昔はこういう形で映画を撮っていたよな』と気づかされたんです」。

大阪芸術大学在学中は、テーマありき、伝えたいメッセージありきではなかったと語り、「要は後付けだったんです」と今作を原点回帰と位置づける。それは、全編78分という尺にも相通ずるものがあったそうだ。「僕の昔の映画と同じくらいの尺なんですよ。何もないところから始めると具体がない分、固まらないんですが、この人で何かやろうかとなると、映画って作れるなって思いますね。僕はそういうタイプなのかもしれません」とかすかに笑みを浮かべる。

ふたりとも決して饒舌ではないだけに、静かに紡ぎだす言葉からは真実のみが浮かび上がってくる。それはまさに“言霊”と表現するにふさわしく、口にしたことはいずれ必ず実現してしまうのではないだろうか、という説得力に満ちあふれている。前田と山下監督のタッグにしても、近い将来3度目の機会がやってくるであろう予感めいたものを感じてしまう。

前田は、自らの女優としてのキャリアについて「私はまだ何もない状態ですからね」と一貫して謙虚な姿勢を保ちながらも、山下監督との再タッグについては目を輝かせながら思いを馳せる。「監督の作品で、私が最初に好きになったのは『天然コケッコー』。なんでこんなにキラキラしているんだろうと思って。それが本当に忘れられなくて…。いつかあの世界のようなキラキラを描く作品に参加してみたいです。それは、私の夢なんです」。この前田のせつなる思いを、山下監督が成就させる日が来ることを待ちわびたい。
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2014年09月26日

しあわせのパン

2014.9.25

DVD「しあわせのパン」(2012.
1.28)

原田知世と大泉洋が主演し、北海道・洞爺湖のほとりの小さな町・月浦を舞台に、宿泊設備を備えたオーベルジュ式のパンカフェを営む夫婦と、店を訪れる人々の人生を四季の移ろいとともに描いたハートウォーミングドラマ。りえと尚の水縞夫妻は東京から北海道・月浦に移住し、パンカフェ「マーニ」を開く。尚がパンを焼き、りえがそれに合ったコーヒーと料理を出すマーニには、北海道から出ることができない青年や口のきけない少女とその父親、思い出の地を再訪した老夫婦などさまざまな人々がやってくる。

しあわせのパン : 作品情報 - 映画.com

原田知世&大泉洋が伝えたい、“しあわせ”な気持ち

「北海道の知られていない魅力を伝える映画を作りたい」という思いから、企画がスタートした映画「しあわせのパン」。選ばれたのは、北海道・洞爺湖のほとりの小さな町・月浦。パンカフェ“マーニ”を営む1組の夫婦と、店をおとずれる人々の人生を描いた、心温まる物語だ。マーニのオーナー夫婦を演じるのは、原田知世と大泉洋。自然体という言葉がとてもよく似合う2人が演じる水縞夫妻を通じて見えてくるのは、月浦の自然の風景とタイトルにもある“しあわせ”のあり方──。(取材・文/新谷里映、写真/堀弥生)

カフェ“マーニ”にやってくるゲストは、心のどこかに悩みを抱えている。そんな彼らを癒してくれるのは、夫・水縞くん(大泉)が焼いたパンと、妻・りえさん(原田)がいれるコーヒー、そして2人の心のこもったもてなしだ。だが、理想の夫婦に思える2人もまた、悩みを持って月浦へやってきた。原田は「りえさんは、心の奥の扉を閉めて鍵をかけてしまっているんですよね……」と心情を分析する。「東京で頑張ってきたけれど、だんだんと心が疲れてきて、無意識のうちに心の奥の扉を閉めてしまったんです。彼女を思いやって、水縞くんはりえさんを月浦へ行こうと誘ってくれるんです。時間をかけてその扉が開いていくというか、それは月浦という場所であったり、水縞くんの穏やかで包み込むような愛であったり、そこに訪れる人たちとの出会いであったり、そういういくつものことがあって変化していくんですよね」。ひとりではできないことも誰かと一緒ならできる、喜びもつらいことも分け合うことが幸せ──当たり前だけれど忘れがちなことを、気づかせてくれたと言う。

りえさんを深い愛で見守り続ける水縞くんを演じる大泉は、2人だからこそ生まれる強さを体現し、女性があこがれる理想の男性像を作り上げた。原田の「この映画が公開されたら、大泉さんが理想のだんなさまNo.1になると確信しています」というほめ言葉に照れながら、男性目線の幸せ感を語る。「人はひとりでも生きていけるけれど、夫婦だったり、自分以外の大切な人がいると、その人を守らなくてはならないという思いが芽生えるもの。その人を守りたい、その人のために頑張る、そう思えることで人(男)は強くなれる。だから、大好きな奥さんをずっと見守る水縞くん、見守り続けるしかない彼の気持ちは、男として理解できたんです。最後にりえさんから一番欲しかった言葉を言ってもらえたときの水縞くんのほっとした気持ちも、ものすごくよく分かる。まあ、2人でいることによって、いろいろな制約や大変さもありますけどね(笑)」

そんな水縞くんというキャラクターに、原田自身も恋に落ち「急かさずに待っていてくれる、すべてを受け止めてくれるところが素敵なんですよね」と優しくほほ笑み、大泉が演じたからこそ水縞くんが理想の男性像として映し出されていると解説する。「水縞くんの穏やかなところ、言葉数が少ないながらもしっかり相手を見つめているところとかは、大泉さんのふだんのキャラクターとは違うかもしれないけれど(笑)、大泉さんにもともとある“ぬくもり”が役を通して出ていると思うんです」。確かに、エンターテイナーの印象が強いだけに、極端にセリフの少ない役どころは新鮮そのもの。本人も「これまでの役は、圧倒的にしゃべる役、コミカルな役が多かったので、新たな挑戦だったかもしれないですね。いつもは、セリフを覚えることが役者として大事な作業だったりするんですが、今回はその必要がなくて。だから、その力を表情に込める必要があった。それほど語らないけれど、愛情が伝わり続けないとラストのあの感動にたどりつかないですから」。また、これまではブサイクであればあるほど喜ばれる仕事が多かったと笑うが、水縞くんを演じるにあたっては、監督から「さっきの方が洋さんがかわいく映るって言われたり。僕をかわいく撮ろうなんて監督は今までいませんでしたらね」

水縞くんという役柄によって、これまでの“らしさ”を打ち破った大泉だが、撮影以外の現場では“らしさ”はそのまま、ムードメーカーとして常に周囲を笑わせ、居心地のいい現場を作っていた。「大泉さんはみんなを楽しませる天才! 私たち(水縞夫妻)は季節ごとにお客さまをお迎えする役柄、現場に新しい役者さんたちが入ってくると、お誘いしてみんなで一緒にご飯に行くんです。ここのお店おいしいんですよ! って連れて行ってくれる。みんなで一緒にご飯を食べる時間が多かったことが、いいチームワークを生んだ気がします」と、大泉の気遣いに感心しきりの様子だ。

また極めつけは、月浦の自然のなかでりえさんが水縞くんの髪を切るシーンだ。多くを語らずとも2人の心が通じ合っているのが伝わってくる、温かな時間が流れるシーンのひとつだが、それは台本にはなかった設定だと大泉は語る。「メイクをしながら原田さんといろいろ話をしていて、この夫婦はいかにも髪を切ってもらってそうな夫婦ですよね? って話をしていたんです。ちょうどその日は良いお天気で、そのアイデアを監督に言ったら、急きょ、小道具を用意してもらって、足してもらったシーンなんです」。そんな何気ない日常の一コマが、この夫婦を描くうえで大切なのだと原田が言葉を添える。「雪道を彼の足跡にそって歩いたり、ただ野菜を一緒に洗ったり、洗濯物をほしていたり、ごく普通の日常を重ねていくことで、2人の暮らしぶりや距離感が伝わると思ったんです。それは月浦だからこそ生きてくることでもあって。あの場所だといろいろと想像できるんですよね」

水縞夫妻の何気ない日常にはいつもパンがある。ブルーベリーのパン、コーンのパン、クグロフ、リンゴのはちみつパン、チーズのパン……。そして、パンと一緒に出されるいれたてのコーヒー、かぽちゃのポタジュー、冬野菜のポトフが人々の心を癒す。パンの魅力を、原田は「ごはんもパンもそれぞれの魅力があって両方好き。ただ、この映画と出合ってパンっていいなと思ったのは、ひとつのおにぎりは(あまり)2つに分けないけれど、1つのパンは分け合えるということ。そういうのっていいですよね」

パンを分け合うこと、喜びや悲しみを分け合うこと、月浦の自然豊かな時間を分け合うこと、この「しあわせのパン」には、さまざまなものを分け合うことの素晴らしさが詰まっている。もちろん、この映画で感じた“しあわせ”な気持ちも、きっと誰かと分け合いたくなるはず──。

しあわせのパン インタビュー: 原田知世&大泉洋が伝えたい、“しあわせ”な気持ち - 映画.com

しあわせのパン』は、日本の映画作品。2012年1月21日に北海道先行公開され、同年1月28日に全国公開された。監督・脚本は三島有紀子で、長編では初監督作品である。主演は原田知世、大泉洋。

東京から北海道の洞爺湖の畔に移り住み、小さなオーベルジュ式のパンカフェ「マーニ」を営む夫婦と、そこに訪れる客たちとのふれあいを描く。

監督は『刺青 匂ひ月のごとく』の三島有紀子で、主題歌である矢野顕子 with 忌野清志郎の「ひとつだけ」にインスパイアされ、本作の脚本を書き下ろした。

北海道洞爺湖町に実在する店がモデルとなっており、すべてのシーンが実際の店舗を含め北海道で撮影された。2011年1月28日にクランクアップの様子がUstreamで生中継された。

キャッチコピーは「わけあうたびに わかりあえる 気がする」。

北海道12スクリーンの先行公開で映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)第20位を記録し、続く全国公開では全国47スクリーンという小規模公開ながら、2012年1月28、29日の初日2日間で興収3,550万620円、動員2万6,130人になり映画観客動員ランキングで第10位を記録した。

あらすじ

小さな2階建ロッジのパン屋が湖畔に開店した。夫の「水縞尚(みずしま なお)」(大泉洋)が焼くパンと、妻の「りえ」(原田知世)が入れるおいしいコーヒーが自慢の店。店名は、りえがお気に入りの絵本「月とマーニ」にちなんで「カフェマーニ」。たちまち近所で人気の店になり、子沢山で農家経営の広川一家、謎のトランクを持った阿部さん(あがた森魚)、地獄耳のガラス作家・陽子さん(余貴美子)、そして毎日配達にきてくれる郵便屋さん(本多力)などの常連客に憩いの場を提供する。薪の竃で焼いたパンの他、自家菜園の野菜を使った料理も絶品。1階のテーブル席では、大きな窓に湖畔の景色が映え、日が没すると月夜が輝く。2階は簡易宿泊所になっており、ときどき、正面のバス停を利用して遠方から旅行客も訪れる。


彼氏にふられ、沖縄旅行をドタキャンされた香織(森カンナ)が一人でやってくる。意気消沈していた彼女の心は、水縞夫婦や地元の青年・山下君(平岡祐太)のもてなしで徐々に癒されてゆく。

バス停に一人でたたずむ小学生の少女・未久(八木優希)。登校拒否を察したりえは、彼女を店内に招き入れ、ホットミルクをふるまう。やがて、父親も訪れ、事情がわかってくるが。

雪で閉ざされたある日、有珠駅に降り立った一組の老夫婦(中村嘉葎雄・渡辺美佐子)からの関西弁の電話。尚がワゴン車で迎えにゆく。50年程前の新婚旅行を思い出し、月を見たいと言っているが。

雪が解け、郵便屋さんが、老夫婦からの礼状を配達してくれる。そして、尚はついに、たったひとつの欲しい物を手に入れる。

しあわせのパン - Wikipedia
posted by シネマっ子 at 13:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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