2014年12月24日

「それでも夜は明ける」(2014.3.7公開)

2014.12.24(水)

それでも夜は明ける」(2014.3.7公開)

第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。


スタッフ
監督スティーブ・マックイーン
製作ブラッド・ピットデデ・ガードナージェレミー・クライナービル・ポーラッド

キャスト
キウェテル・イジョフォーソロモン・ノーサップ
マイケル・ファスベンダーエドウィン・エップス
ベネディクト・カンバーバッチフォード
ポール・ダノジョン・ティビッツ
ギャレット・ディラハントアームズビー

それでも夜は明ける : 作品情報 - 映画.com

19世紀アメリカの物語だが、現代的かつグローバルな視野を持つ映画

主人公のソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、自由証明書を持つ自由黒人。生まれ育ったアメリカ東部では、白人同様の生活を営んでいる。しかし白人社会の一員ではない。さりとて黒人奴隷社会の一員でもない。そんなソロモンの宙ぶらりんの立ち位置を象徴的に表す名場面がある。奴隷として売られた最初の農園で、無能な大工の面子をつぶしたソロモンが縛り首のリンチにかけられる場面だ。

リンチを止めに入った監督官のおかげで、ソロモンは死を免れる。が、監督官が農園主を呼び戻すまでの間、首に縄をかけられたまま爪先立ちの姿勢で放置される。そんな彼の様子を、テラスの上から冷やかに見下ろす白人たち。一方ソロモンの背後に映し出される黒人奴隷たちは、触らぬ神に祟りなしとばかり、ソロモンから目線をそらして忙しく立ち働いている。白人からは見下され、黒人には無視される。そんな圧倒的アウェイの環境にいるソロモンの孤立感と、その中でサバイバルするために彼がどれほど知恵を絞り、どれほど壮絶な試練をくぐり抜けねばならないかを、スティーブ・マックィーン監督は、不気味なほどヒリヒリするこの場面を通じて饒舌に物語っている。

実際、自由黒人というアウトサイダーを主人公に奴隷制の暗黒面を見つめた点は、「アミスタッド」などの黒人奴隷を扱った過去作とは異なるこの映画の最大の個性だ。マックィーン監督は、白人でもなく奴隷でもないニュートラルな立場のソロモンを観客代表のように描き、人権を持たない奴隷の境遇に対するソロモンの驚きや屈辱感を我々に追体験させる。そして、サディスティックな農園主のごとき独裁者が支配する社会で、ソロモンと同じように自分の知性を隠し、ひたすら頭を低くして今日を生き抜こうとしている人々が、今もこの世界にいることを思い起こさせる。物語の舞台は19世紀アメリカだが、実は現代的かつグローバルな視野を持つ。そこにクレバーな魅力を感じさせる映画だ。

(矢崎由紀子)それでも夜は明ける : 映画評論・批評 - 映画.com


posted by シネマっ子 at 14:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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